研究概要 |
(1)子官内膜癌患者より得られた手術検体(N=79)およびコントロール(正常内膜20例)に対し、HDAC3抗体を使用し免疫染色を行い、200細胞中の陽性細胞数をpositivity index (PI)とし定量化した。HDAC3のPIは子宮内膜癌症例で有意(p<0.05)に発現亢進していた。HDAC1, HDAC2の免疫染色結果と併せ、臨床病期、組織グレードとの関連を検討すると、HDAC1発現が臨床病期、高グレードと相関した。また、HDAC陽性症例(PI>平均PI)と陰性症例の比較においてHDAC1陽性症例で有意(p<0.05)に患者予後不良であった。この結果から、クラスIに分類されるHDACアイソフォームではHDAC1発現の過剰発現が子宮内膜癌では重要であると考えられた。 (2)また、HDAC1陽性、転移陽性症例において、転移腫瘍でE-cadherin発現減少、HIF-1発現亢進を認めた。我々が以前報告した結果と併せ、HDAC阻害剤が子宮内膜癌細胞の増殖、浸潤、転移を抑制する可能性が示唆されたため、子宮内膜癌細胞株を用い検討を行った。 (3)子宮内膜癌細胞株にHDAC阻害剤{trichostatin A (SAHA), apicidine, suberoylanilide hydroxamic acid (SAHA)}を添加し、増殖能をWST-1アッセイ、アポトーシス誘導をアポストランド法、細胞遊走能をスクラッチアッセイにて検討した。その結果、3種のHDAC阻害剤にて細胞増殖能は低下し、アポトーシスが誘導された。また細胞遊走能も有意に低下した。3種の薬剤のうちTSAが最も低濃度で細胞増殖抑制効果を認めたが、細胞周期調節因子発現を検討したところ、TSA添加によりp21発現が亢進しサイクリンA発現が有意に低下していた。 今後、子宮内膜癌におけるHDACの浸潤能への関与の検討が必要である。
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