正常子宮平滑筋組織2検体と子宮肉腫組織2検体の蛋白質発現をiTRAQ法を用いて網羅的解析・比較して、肉腫で共通して発現が増強または減弱していた蛋白質(それぞれ8種類・11種類)を同定した。特にこの中で、蛋白質Aは肉腫組織2検体において正常組織に比して5.39倍および5.46倍に発現が増強しており、一方、蛋白質Bは肉腫組織2検体において正常組織に比して0.24倍および0.14倍に発現が減弱していた。現在、これら候補蛋白質計11種類について、多くの肉腫臨床検体・肉腫細胞株、および多くの子宮筋腫臨床検体、多くの正常子宮筋臨床検体を用いて、子宮肉腫に特異的に発現が変化しているかを免疫染色およびウエスタンブロッティングによって解析している。この中で、蛋白質Cは、iTRAQ解析では肉腫組織2検体において正常組織に比して8.77倍および2.14倍に発現が増強していたが、多くの臨床検体を用いた検討では、子宮肉腫のほとんどで発現してはいたが、子宮筋腫においても相当数発現しており、子宮肉腫特異的とはいえなかった。一方、蛋白質DはiTRAQ解析では肉腫組織2検体において正常組織に比して7.69倍および3.29倍に発現が増強していたが、多くの臨床検体を用いた検討では、子宮筋腫および正常子宮筋組織ではほとんど発現していなかったが、子宮肉腫でも発現している検体は少なかった。しかし、蛋白質Eは子宮肉腫において比較的特異的に発現していることが明らかとなり、現在解析を進めている。他の蛋白質についても、多くの臨床検体を用いて、iTRAQ法のvalidationを行っている。
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