昨年度、正常子宮平滑筋組織2検体と子宮肉腫組織2検体の蛋白質発現をiTRAQ法を用いて網羅的解析・比較して、肉腫で共通して発現が増強または減弱していた蛋白質(それぞれ8種類・11種類)を同定した。今年度は、これら候補蛋白質計11種類について、多くの肉腫臨床検体・肉腫細胞株、および多くの子宮筋腫臨床検体、多くの正常子宮筋臨床検体を用いて、子宮肉腫に特異的に発現が変化しているかを免疫染色およびウエスタンブロッティングによって解析した。 この11種類の蛋白質の中で8種類は、免疫染色およびウエスタンブロッティングにて、必ずしも平滑筋肉腫で特異的に発現が増減しているとは言えなかった。残りの3種類のうちの1種類は、これまでから平滑筋肉腫の発生に関与していることが明らかなcalponin h1であったため、現在、残りの2種類に絞って平滑筋肉腫の発生における役割の解析を進めてた。この2種類(蛋白質Aおよび蛋白質B)は、そもそもiTRAQ解析にて、蛋白質Aは肉腫組織2検体において正常組織に比して5.39倍および5.46倍に発現が増強しており、一方、蛋白質Bは肉腫組織2検体において正常組織に比して0.24倍および0.14倍に発現が減弱しているものであったが、平滑筋肉腫の臨床検体を用いた免疫染色にても、極めて特異性の強い発現パターンを示していた。子宮平滑筋肉腫の細胞株を用いて、この蛋白質の細胞増殖能・転移浸潤能・化学療法感受性との関連などを解析した。
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