研究概要 |
再発卵巣癌の多くは化学療法に抵抗性を示し,長期予後はいまだ不良である,卵巣癌患者の予後改善のためには有効な抗癌剤の選択が重要であり,有用な抗癌剤感受性試験の開発が急務となっている. 我々はこれまでに,抗癌剤耐性機序のうちプラチナ製剤の耐性には細胞内解毒作用が関与することを示した.一方,PTX耐性にMDR-1遺伝子が関与する可能性を示した.また,topoisomerase(Topo)活性とイリノテカン(CPT-11)の活性体であるSN-38のIC_<50>値との間に有意な相関がみられた.MDR-1,MRP-1,topo Iおよびtopo IIα遺伝子を用いた化学療法感受性試験を試みた結果,高い正診率が得られ,耐性遺伝子を用いた抗癌剤感受性試験の可能性を示した.そこで,卵巣癌由来細胞株2株とそのPTXおよびCDDP耐性誘導株2株の計4株を用いて,cDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行うことにより,上皮性卵巣癌における抗癌剤耐性機序の一端を明らかにするとともに,基礎的検討に基づき検索した耐性遺伝子を用いた新たな感受性試験を開発することを目的とした本研究を計画した. 平成22年度研究で,主に培養卵巣癌細胞株を用いて,cDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行い,新規抗癌剤感受性試験の計8つの候補遺伝子を設定した.これらの遺伝子定量を行った結果,耐性細胞株で親株に比較して有意に上昇することを明らかにした.また,同意を得られた患者で20症例分の手術検体を収集し,当院がんセンター内にある共同保管施設において管理・保管すると同時に,カルテによる詳細なデータ収集を行いデータベースを構築した.この臨床検体を用いて来年度は集中的に分析を行う予定である.
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