【目的】ゴナドトロピンサブユニット発現にExtracellular signal-regulated kinase(ERK)の活性化が重要であるとされているが、MAP kinase phosphatase 1(MKP 1)はERKを脱リン酸化して不活化する。GnRHは視床下部よりパルス状に分泌され、高頻度GnRH刺激ではLH優位、低頻度GnRH刺激ではFSHが優位に発現することが知られており、GnRHパルスの刺激頻度とMKP1発現について検討を行った。【方法】ゴナドトロピン産生モデル細胞としてLβT2細胞を用いた。刺激はperifusion systemを用い、5分間のGnRH刺激を30分間隔で行う高頻度GnRHパルス刺激と120分間隔で行う低頻度GnRHパルス刺激を行った。MKP1発現およびERK活性化はウエスタンブロッティング法で測定した。【成績】静止刺激においてGnRHは刺激後60分よりMKP1発現を増加させた。GnRHパルス刺激においてMKP1発現は低頻度GnRH刺激より高頻度GnRH刺激で優位に増加した。高頻度GnRH刺激では刺激開始2時間後(GnRHパルス4回)よりMKP1の発現を認めたが、低頻度GnRH刺激では12時間後(GnRHパルス6回)でも発現は認めなかった。GnRH投与量を増加させても低頻度GnRHパルス刺激においてMKP1発現は増強せず、高頻度GnRHパルス刺激にのみ発現を認めた。各GnRHパルスにて一過性のERKリン酸化-脱リン酸化反応が生じるが、このときMKP1発現の変動は認めなかった。【結論】MKP1発現にはGnRHパルスの間隔及びパルス数の両方が重要であると考えられた。MKP1発現は高頻度GnRH刺激に特異的に生じることから、GnRHパルス頻度依存性ゴナドトロピンサブユニット発現に関与する可能性が示された。
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