性腺刺激ホルモンであるLuteinizing hormone(LH)とFollicle-stimulating hormone (FSH)はともに下垂体前葉のゴナドトロピン産生細胞から分泌され、性機能に対し重要な役割を果たしている。この2つのホルモンは、主に視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)により制御されるが、GnRH以外の脳、視床下部ホルモンや生理活性物質によりゴナドトロピンが制御されている可能性も考えられる。そこでヒツジ視床下部からcAMPを活性化する物質として発見されたPituitary adenylate cyclase-activation polypeptide (PACAP)について、ゴナドトロピン産生調節に対する役割について検討を行った。ゴナドトロピン産生細胞のモデル細胞としてLβT2細胞を使用した。LβT2細胞をGnRHで刺激するとPACAP及びPACAPの受容体であるPAC1-RのmRNAが増加した。LβT2細胞にPAC1-Rを発現させてPACAPで刺激をするとLHβ、FSHβサブユニットプロモーター活性が増加した。perifusion systemを使用しGnRHパルス頻度を変化させてPACAP mRNAの発現を検討したところ、30分に1回の高頻度刺激より120分に1回の低頻度刺激においてPACAP発現が増加した。視床下部で産生されているPACAPはGnrHと同様にパルス状に分泌されている可能性が考えられるため、PACAPをパルス状にLβT2細胞に投与し、ゴナドトロピン発現について検討を行った。高頻度PACAPパルス刺激ではLHβがFSHβに比べて優位に増加し、低頻度パルス刺激ではFSHβ発現がLHβに比べて優位に発現した。以上の結果よりPACAPもまたGnRHと同様にゴナドトロピンの特異的産生に関与している可能性が考えられた。
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