研究概要 |
【目的】最近我々は、子宮平滑筋でERαのプロモーター領域のメチル化がERα発現に関与していることを明らかにした。そこで、本研究では、ERα遺伝子に注目し、ERα遺伝子のプロモター領域のDNAメチル化状況が組織によって異なり、このことが組織特異的なERα発現調節機構であることを明らかにすることを目的とした。【方法】ERα遺伝子発現量の異なる組織において、ERα遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化状態を解析した。ERα遺伝子発現が高い組織として、子宮内膜、乳腺、乳癌組織、子宮筋層などを用い、発現が低い組織として、エストロゲンレセプター陰性乳癌組織、胎盤、皮膚を用いた。(1)各組織よりRNAを抽出し、ERα mRNA発現をreal time RT-PCR法にて解析し比較した。(2)sodium bisulfite genomic sequencing法にてERα遺伝子プロモーター-1,188~+229bpの領域(56CpG部位)のDNAメチル化状態を網羅的に解析し比較した。【結果】(1)ERα mRNA発現は、子宮内膜、乳腺、乳癌組織、子宮筋層では発現が高く、エストロゲンレセプター陰性乳癌組織、胎盤、皮膚では、ERα mRNA発現は認めなかった。(2)ERα遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化状態は、プロモーター下流の-556~+229bpの領域(49CpG部位)においては、すべての組織で非メチル化状態で組織による差を認めなかった。プロモーター上流の-1,188~-790bpの領域(7CpG部位)では、組織による差を認め、ERα mRNA発現が高い組織である子宮内膜、乳腺、乳癌組織、子宮筋層では低メチル化状態、ERα mRNA発現が低い組織であるエストロゲンレセプター陰性乳癌組織、胎盤、皮膚では高メチル化状態であり、同領域のDNAメチル化状態とERα mRNA発現に関連を認めた。
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