研究概要 |
目的:本年度は、胞状奇胎の分子マーカー同定するため、正常胎盤組織と比較し全胞状奇胎で特異的に発現する全胞状奇胎特異的miRNAを網羅的にスクリーニングした。 対象と方法:全胞状奇胎組織とその患者血液、および正常例より採取した胎盤組織、臍帯血および母体血液を一組とした。それぞれの検体よりmiRNAを抽出し、次世代高速シーケンス法により、各検体間の発現レベルを比較した。発現レベルはリード数で算出し、10リード未満のものを陰性とした。血液細胞におけるリード数は陰性、かつ正常胎盤組織と比較して奇胎組織で20倍以上の変化を認める全胞状奇胎特異miRNAを同定した。ついで、同定されたmiRNAの全胞状奇胎組織14例および6-10週の絨毛組織(コントロール群)20例における発現量をreal-time PCR法を用いて確認し、定量値はコントロール群の中央値を基準としたMoM値として算出した。 結果:全胞状奇胎特異的miRNAとしてmiR-520b, 520f, 520c-3pが同定され、正常胎盤組織と比較した全胞状奇胎組織におけるMoM値は、520b:1.51(0.02-2.54),520f:1.89(0.02-4.23),520c-5p:1.31(0.01-2.95)であった(Mann-Whitney検定、いずれもp<0.05)。 結論:全胞状奇胎特異的miRNAが存在し、それらは正常妊娠と胞状奇胎とを鑑別する分子マーカーになり得ると期待された。
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