研究課題
1)絨毛特異的cell-free miRNA定量化の絨毛性疾患における臨床的有用性を明らかにする目的:全胞状奇胎特異的microRNAを網羅的にスクリーニングし、その臨床的有用性について検討した。方法:(1)全胞状奇胎組織とその患者血液、および正常妊娠例より採取した胎盤組織からmicroRNAを抽出し、次世代高速シーケンス法により各検体間の発現レベルを比較した。血液細胞に発現がなく、かつ正常胎盤組織と比較して奇胎組織で2倍以上発現しているmicroRNAを抽出した。(2)全胞状奇胎組織14例、初期の正常絨毛組織20例を対象として、(1)で抽出されたmicroRNAの発現量をReal-time RT-PCR法を用いて定量し、全胞状奇胎組織に高発現するmicroRNAを選別した。(3)全胞状奇胎15例、正常初期妊娠15例の血漿を対象として、(2)で選別されたmicroRNAの血漿中に流入量を比較し、全胞状奇胎に高発現するmicroRNAを特定した。(4)全胞状奇胎15例の血漿を対象として(3)で特定したmicroRNAが掻爬術前後でどう推移するかを検証した。統計学的有意差はp<0.05とした。本研究は倫理委員会の承認を得て、同意の下に行われた。成績:(1)次世代高速シーケンス法を用いた網羅的解析により、全胞状奇胎特異的microRNAの候補として12種類のmicroRNAが抽出された。そのすべてが19番染色体上のクラスター(C19MC)領域に存在していた。(2)全胞状奇胎組織特異的microRNAとしてhsa-miR-520f、hsa-miR-520b、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-519b-3pの4つが選別された。(3)全胞状奇胎患者血漿中の特異的microRNAとしてhsa-miR-520fが特定された。(4)全胞状奇胎患者血漿15例すべてにおいて掻爬術前後でhsa-miR-520f流入量は有意に減少していた(willcoxon test, p<0.05)。結論:全胞状奇胎特異的microRNAが存在し、それらはC19MC領域に存在していた。特にhsa-miR-520fは全胞状奇胎の分子腫瘍マーカーになりうると示唆された。2)絨毛特異的mRNA/miRNAの染色体局在領域に遺伝子異常の有無を検索することで、本疾患発症の分子メカニズム解明の手掛かりを得る。胞状奇胎と患者及び夫の血液DNAを一組として、計15組についてDNA多型マーカーを用いた検体間の比較解析を行ったが、全ての組で染色体の微細欠失の存在は認められなかった。
すべて 2011
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