前年度に引き続き、Bufalin(ガマガエルから抽出された毒素でdigoxin様作用を有し、現在日本でも漢方薬として使用されている薬剤)および、β-HIVS(本邦の山地草原に生えるムラサキ科ムラサキの根より抽出したシコニンをエステル化させたもので抗腫瘍作用、apoptosis誘導作用、抗炎症作用、抗菌・抗真菌・抗ウイルス作用等、種々の作用を持つ薬剤)が、子宮内膜症細胞に対する作用を研究し、Bcl-2やBcl-XLを介したアポトーシス惹起作用があること示した。更に、細胞周期にも着眼して研究を進め、Bufalinやβ-HIVSは子宮内膜症細胞に対し、細胞周期を停止させる作用(GO/G1arrest)があることも発見した。現在、これらの研究をin vivoの研究で行うため、Bufalin、β-HIVSの効果を子宮内膜症モデルのマウスでの実験を検討し、将来、臨床応用できるよう研究を進めている。 また、Semaphorinについても子宮内膜症治療薬としての可能性がないか検討中である。Semaphorin分子群は1990年代に神経節因子として同定された分子群だが、その機能は神経系にとどまらず器官形成、血管新生、癌の進展への関与など、多岐にわたることが明らかとなっている。SemaphorinはVEGF receptorに作用することでVEGFと競合し血管新生の阻害し、更にアポトーシスの誘導も担うことも知られている。このアポトーシス誘導作用に着眼し、現在、種々の癌細胞に対する新たな抗癌作用の研究が行われている。Pilot studyでは、Semaphorinが子宮内膜間質細胞および、子宮内膜所細胞にも発現していることは確認しており、その発現量や、子宮内膜症細胞に対してどのように影響するか研究中であり、Bufalinやβ-HIVSと同様に、in vivoへの実験へと進み子宮内膜症治療薬としての可能性を検討している。
|