本研究は、HLA-EがCD56^<bright>NK細胞、HLA-GがCD14+細胞の脱落膜への集積に関与しているのか、さらに、HLA-G抗原が妊婦血清中に循環しているのかを明らかにすることを目的としている。特にHLA-Eが細胞表面に発現するには、HLA-E以外のHLAクラスIのシグナルペプチドが必要であり、胎盤トロホブラスト上では主にHLA-Gのシグナルペプチドを結合して発現している。このHLA-Gのシグナルペプチドを結合したHLA-E(HLA-E/Gpep)はM細胞レセプターのCD94/NG2A/Cと非常に強く結合する。胎盤トロホブラスト上のHLA-E/GpepやHLA-Gが、脱落膜に脱落膜CD56^<bright>NK細胞などを集積させるには、胎盤トロホブラストにのみ強くHLA-Gが発現していなければならないが、近年、HLA-Gは胎盤トロホブラスト以外にも非妊婦の血清・体液中に存在するという報告が多い。そこでまず、胎盤トロホブラスト以外におけるHLA-G発現あるいは産生細胞が生体内に常在するのか、非妊婦血清・体液中のHLA-G抗原の有無に関する検証が必要であるため、血清中やその他体液中のHLA-Gを正確かつ高感度に検出できる系の確立を行った。 昨年度、抗HLA-G抗体G233を用いて、これまでより10倍高感度なELISA測定系を確立した。しかし本方法においても血清・体液中のHLA-Gを正確に検出するに至らなかった。本年度は、血清・体液中のHLA-G抗原の有無を検証するために、G233を用いた免疫沈降とウエスタンブロッティングを組み合わせた系により1ng/mlのHLA-Gを検出できる系を確立した。現在、この方法により、血清・卵胞液中のHLA-G抗原を解析中である。この解析結果を基に、HLA-GのELISA測定系を再構築する予定である。
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