研究概要 |
私たちはすでにmir-182,mir-146などが卵巣がんの悪性度や予後と強く相関していることを見出している。マイクロRNAが卵巣がんにおいて臨床マーカー、あるいは治療標的分子として利用できるかを検討するためには、これらのマイクロRNAの卵巣がんにおける機能解析がまず必要と考え、Mir-182、mir-146のpri-miRNAをすでに構築してあった発現ベクターpcDNA3.1-GFPspに組み込み、これらについて細胞増殖能等の変化を検討したが、明らかな差を認めなかった。恒常的発現系を用いて増殖能について検討したが、やはり明らかな差を認めなかった。現在足場非依存性の増殖能について追加検討中である。様々な細胞におけるmir-182,およびmir-146の発現を検討したところ、mir-182は卵巣癌腫瘍細胞で過剰発現が認められるが、mir-146はがん細胞ではなく、マクロファージに高発現していることがわかった。マクロファージの浸潤は卵巣癌の予後不良因子としても知られ、卵巣癌組織におけるmir-146はマクロファージの浸潤を反映している可能性が考えられた。またCD8T細胞の浸潤は逆に卵巣癌の予後良好な因子として報告されている。Mir-182の発現とCD8Tリンパ球浸潤の関連性を調べたところ、mir-182高発現卵巣癌組織においてCD8Tリンパ球の浸潤が少ないことがわかった。Mir-182が何らかの機序によりCD8陽性Tリンパ球の浸潤をブロックし、これが予後に影響している可能性が示唆された。mir-376,mir-432については、予測プラグラムによりMICBがmir-432のターゲットの可能性であることがわかった。ある種の卵巣癌細胞株では、mir-432の過剰発現によりMICBの発現低下が確認できた。以上のような機序からも考え、マイクロRNAが卵巣がんにおいて臨床マーカー、あるいは治療標的分子として利用できる可能性があると考えられた。
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