1.子宮体癌の免疫抑制性分子の発現を検討するため、9種の子宮体癌細胞株(Ishikawa、Hec-Ib、Hec-108、SNG-2、SNG-S、SNG-M、HHUA、HOOUA、AN3CA、SNG-W、SNG-S)の培養上清中の液性分子(IL-6、VEGF、IL-10、TGF-β1)濃度を測定した。その結果、子宮体癌では4種のサイトカインのうち、IL-6の分泌亢進を高頻度に認め、HHUA、Hec-108、SNG-IIで特に発現が高かった。同時に各細胞株のシグナル伝達系の活性化を検討するため、ウェスタンブロット法でPTEN、p-Akt、p-STAT3、NFκ-B(p-P65)、p-Erk1、p-Erk2、β-cateninの発現を評価し、本研究の基礎的データとした。すべての細胞株でPTENの発現とp-Actの発現は負の相関を認め、子宮体癌におけるPTEN-Act系の重要性が示唆された。 2.免疫抑制に重要とされている膜タンパクであるB7ファミリーのうち、B7-H1、B7-H4、B7-DCの発現をFACS法によって検討した。その結果、B7-H1は10種のうちHec-1bとHHUAを除く8種で発現を認めたが、B7-H4およびB7-DCを発現している細胞株はなかった。これより、B7ファミリーについてはB7-H1の発現解析を行うこととした。 3.子宮体癌ではPTEN-Akt系が悪性化に関与するとされている。このため、まず、Aktが活性化されていたIshikawa、Hec-108、SNG-2を用いてのAkt阻害剤であるWartomaninを作用させ、B7-H1の発現が変化するか検討したが、B7-H1の発現は低下しなかった。同様に、MAPK阻害剤であるUO126、さらにNF-κB阻害剤でも検討したが、B7-H1に発現の変化を認めなかった。 今後、子宮体癌組織での免疫抑制分子の発現と患者予後を検討し、予後因子となる分子を同定中である。
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