研究概要 |
子宮体癌において,間質-腫瘍相互作用の観点から予後(癌の再発)と関連する遺伝子を同定し,さらに化合物アレイを用いて子宮体癌の新規分子標的薬発見の可能性を探索することを目的として,平成22年度は以下の検討を行った.【対象と方法】1.対象:子宮体部類内膜腺癌60例.年齢の中央値は55才(25-81才),進行期(I期:31,II期:4,III期:20,IV期:5)を対象とした.全例で標準手術が実施され,術後化学療法は50例で施行され,38例が無病生存中であった.全症例の観察期間の中央値は1,830日(120-3,375日)であった.2.アレイ解析:子宮体癌凍結組織60例を用いて,マイクロダイセクションを施行し癌実質および間質よりRNAを抽出後,アレイ解析に供した.Microarray tipはHumanRef-8 BeadChip(Illumina社製)を使用し,Whole-GenomeDASL Assayにて解析した.3.再発に関与する遺伝子の抽出:再発群と無再発群で発現の異なる遺伝子を,再発をイベントとした Cox単回帰にて癌実質および間質毎に抽出した(p<0.0005).【結果】再発群と無再発群で発現が異なる遺伝子は,癌実質および間質それぞれで88個,57個が抽出された(p<0.0005).その内訳は,それぞれシグナル伝達系:22個(25%)16個(28%),細胞発育:5個(6%),5個(9%),代謝:13個(15%),6個(11%)などであり,両群で差を認めなかった.また,11個は実質および間質の両者で共通しており,これらは癌-間質相互作用の関与が示唆された. 平成23年度は,前年度に抽出した癌の再発に関与し,かつ癌-間質相互作用の関与が示唆される遺伝子に焦点をしぼり機能解析を進め,さらには化合物アレイを用いた新規分子標的のスクリーニングを施行する予定である.
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