研究概要 |
子宮体癌の発現解析を実施し予後(癌の再発)を規定する遺伝子を探索する目的で,60例の子宮体癌を対象として,癌組織をマイクロダイセクションにより癌実質および間質に分離しRNAを抽出し,それぞれでマイクロアレイ解析を施行した.続いて,再発群と無再発群で発現の異なる遺伝子を,再発をイベントとしたCox単回帰にて癌実質および間質毎に抽出した(p<0.0005).再発群と無再発群で発現が異なる遺伝子は,癌実質および間質それぞれで88個,57個が抽出された(p<0.0005).その内,11個は実質および間質で共通していた。その内訳は,それぞれシグナル伝達系:22個(25%),16個(28%),細胞発育:5個(6%),5個(9%),代謝:13個(15%),6個(11%),核酸代謝:8個(9%),5個(9%)および免疫系:2個(2%),3個(5%)であり,両群で差を認めなかった.次に,抽出した遺伝子セットを候補変数とし,再発を結果変数としたロジスティック回帰による変数選択を行い再発予測モデルの構築をおこなった.構築したモデルを用いて各個人の再発率を予測し,再発率が0.5以上であれば再発高リスク群と判定して実際に観測された再発と,予測された再発の一致率をもって正診率を算出した.再発予測モデルは癌実質4遺伝子,間質3遺伝子にて構築した.再発を予測できる正診率は,それぞれ66%,73%であった.また予後不良群および良好群でのprogression free survival(PFS)は,癌実質モデルを使うと667日vs3,318日(p<0.001),間質モデルを使うと862日vs3,137日(p<0.001)であった. これまで悪性腫瘍の再発を予測する上で間質の遺伝子発現を対象にした報告は少なく,特に癌実質および間質の発現プロファイルを同時に解析した報告は存在しない.本研究では,癌実質だけでなく間質においても遺伝子発現と予後が相関することを明らかにした.選別した全遺伝子のうち11遺伝子が癌実質および間質で共通して再発と関連しており,これらの遺伝子については癌-間質相互作用の関与が示唆された.
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