研究概要 |
我々はHoechst33342の取り込みの低い分画の細胞(side population cells,SP細胞)を用いて癌幹細胞の特性を解析してきた。子宮体癌細胞株Hec1細胞のSP細胞は癌幹細胞の性質を示し、著明な運動能亢進と間葉系細胞への分化能が子宮体癌幹細胞の特徴であると考えられる。それぞれの細胞におけるALDH1の発現をリアルタイムPCRにより解析したところ、SP細胞において有意に発現の亢進をみとめALDH1は子宮体癌幹細胞のマーカーであることが示唆された。精巣特異的発現遺伝子として同定されたdbpC/contrinは、胚細胞だけではなく、胎盤絨毛細胞、胚細胞性腫瘍、大腸がんなどにも発現が報告され、癌幹細胞との関与が示唆されている。本年度は子宮体癌細胞株を用いて癌幹細胞形質獲得機構におけるdbpC/contrin(以下dbpC)の関与とALDH1の発現を解析した。1)内因性dbpCの発現がみとめられない子宮体癌Ishikawa(IK)細胞株にdbpC発現ベクターを形質導入し、過剰発現株(IK-dbpC細胞)を樹立した。2)IK-dbpC細胞はmock細胞に比べて細胞増殖能が亢進し、幹細胞マーカーALDH1の発現が亢進していた。3)各細胞株のSP細胞の割合を解析したところ、mock細胞に比べIK-dbpC細胞において約10倍のSP出現率をみとめた(mock:0.058%,IK-dbpc:0.64%,p=0.03)。4)IK-dbpC-SP細胞は長期増殖能を示し再解析により25%と高率のSP細胞の再出現をみとめたのに対し、IK-dbpc-nonSP細胞は2週間以内に増殖は停止し細胞死に至った。5)IK-dbpc細胞にdbpcsiRNAを導入したところ、ALDH1発現の減少とSP細胞の割合の減少をみとめた。
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