本年度の検討としては、まずマウスY-1細胞を用いOvary Specific Acid Protein (OSAP)の局在について免疫電顕を用いて検討した。Pre-embedding法では、ミトコンドリア外膜にdensityの高い陽性像が観察され、これまでの免疫蛍光染色による結果と矛盾しないものと考えられたが、Post-embedding法による所見では、ミトコンドリアの大きさにより染色性に違いがあり、比較的大きいミトコンドリアに限ってOSAP陽性像が認められた。これはミトコンドリアの成熟とOSAPの関連性を示唆する結果とも考えられ、OSAP発現抑制におけるミトコンドリア形態変化と共に、電顕像について今後の検討を要すると考えられた。 OSAPはヒトにおいては副腎に突出して高発現している。ヒト成人副腎と妊娠中期胎児副腎(HFA)の比較ではOSAP mRNAはHFAにより多く発現し、ヒト胎児臓器中においてもHFAで最も高い発現レベルを示すことが明らかとなった。また局在に関しては、laser-capture microdissectionによる検討で機能層であるヒト胎児副腎内層(fetal zone)に高発現することが判明した。また胎児副腎皮質モデル細胞株であるNCI-H295A細胞でOSAP蛋白を一時的にknock downすると、培養液中のコルチゾールやdehydroepiandrosterone sulfate産生量が低下し、この系においてもOSAPがステロイド産生に関わっていることが示唆された。 OSAPのアポトーシス抑制に関する役割の検討については、Y-1細胞やNCI-H295A細胞でOSAPを一時的にknock downしただけでは細胞のviabilityが有意に変化しないことが判明し、アポトーシスを惹起する実験条件に関して、より詳細な検討を要するものと考えられた。
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