本年度の検討では、まず海外共同研究者から得られたヒト胎児臓器検体を用いて、ヒト胎児臓器におけるOSAPmRNA発現についてrealtimeRT-PCR法により検討した。ヒト胎児におけるOSAPは、成人と同じくステロイド産生臓器で多く発現しており、内因性コントロールであるβ-glucuronidaseの発現量との比較で、副腎>精巣>卵巣の順であった。これらの臓器は胎生期においてもステロイド産生を行っており、OSAP発現の順と各臓・器のステロイド産生のactivityの順は相関していた。また調べた範囲内の非ステロイド産生臓器では、OSAPの発現は非常に低いかほとんどみられなかった。 また、前年度までの検討において、ミトコンドリアはアポトーシスの初期段階に深く関与している細胞内小器官であることから、OSAPとアポトーシスの関連について検討した。アポトーシスの際にミトコンドリアには電子伝達系の変化による膜電位の消失や、cyt-Cの放出に伴うCaspaseの活性化などの変化が生じる。そこでOSAPの発現抑制によるこれらの現象の変化を検討した。まず、蛍光色素JC-1を用いてミトコンドリア内膜電位(Δφmt)の変化をフローサイトメトリーで解析した結果、Δφmtの低下が認められた。また、westernblottingにおいて、細胞質分画にcyt-C蛋白が認められ、cytc蛋白の細胞質への放出を示唆する所見と考えられた。以上の結果から、前年度までの検討結果と併せ、OSAPはステロイド産生と深く関わっていることがより強く示唆され、またミトコンドリア特異的蛋白であることと関連した機能(=アポトーシス制御)を有している可能性が考えられた。
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