研究課題
Fibroblast growth factor receptor2 IIIc(FGFR2IIIc)蛋白は、FGFR2遺伝子産物であるFGFR2蛋白の選択的スプライシングのアイソフォームの1つで、前立腺癌、膀胱癌や膵臓癌においては、免疫グロブリンドメインであるIII領域のFGFR2IIIbからFGFR2IIIcへのクラススイッチが癌の進展に深く関与することが報告されている。これまでに、子宮頸部異形成および子宮頸癌組織を用いて、組織中でのFGFR2IIIc蛋白の局在について検討し、子宮頸部異形成の進行にしたがってFGFR2IIIc蛋白の発現が高くなり、子宮頸癌においては全症例で過剰発現していることを報告している。また、培養子宮頸癌細胞の一つであるCaSki細胞にFGFR2IIIc発現ベクターを導入した安定過剰発現株を作成したところ、in vitroにおける細胞増殖能が亢進したが、細胞形態や遊走能には変化を認めなかった。また、ヌードマウスの皮下移植モデルにおいても腫瘍形成能が亢進することも明らかとなった。今回、新たに子宮内膜癌におけるFGFR2IIIc蛋白の発現を免疫染色法にて確認を行った。32例の子宮内膜癌組織を用いて検討した結果、FGFR2IIIc蛋白は全ての症例において発現していることが明らかとなった。また、臨床病理学的因子との関連を検討した所、癌の分化度と関連があることも明らかとなった。今後、さらに子宮内膜癌の前癌病変におけるFGFR2IIIc蛋白の発現と関連遺伝子や蛋白発現を検討することで、癌の進行におけるFGFR2遺伝子およびFGFR2IIIc蛋白が果たす役割を解明して行く予定である。これらのことから、FGFR2遺伝子およびFGFR2IIIc蛋白は子宮頸癌だけではなく子宮内膜癌やその前癌病変についても新たな治療標的となる可能性を考えている。
すべて 2011
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