この研究は、栄養膜由来の胎盤特異的microRNA(マイクロRNA:miRNA)が、エクソゾームを介した栄養膜-免疫細胞クロストークにより、機能性RNAとしてT細胞などで機能するのか、分子生物学的手法を用いて明らかにするとともに、さらに、正常妊娠および異常妊娠(流産)において、このクロストークにより胎盤特異的miRNAが母児免疫寛容にどのように関与するのか検討することを目的に研究を行いました。1)基礎解析:末梢血(妊婦)よりT細胞およびNatural Killer(NK)細を分離し、マイクロアレイを用いてmRNAおよびmiRNAの網羅的解析を行いました。その結果、分娩後に胎盤特異的miRNAを含む低下したmiRNAに対して、発現が上昇したmRNAを抽出しました。どのようなシグナル経路に関与しているかバイオインフォマティクス解析を行い、分娩中はTh2優位を示すmiRNA-mRNAネットワークの制御がなされていることを示唆する新知見を見出しました。また、分離細胞を用いて、細胞制御性T細胞とNK細胞でエクソソームの取り込みの違いがあるか、胎盤特異的miRNAの含有量をreal-time PCRにて定量解析した。NK細胞でエクソソームの取り込みが高いことが示されました。2)臨床解析:H23年度に引き続き、磁気ビーズシステムを用いて、妊娠初期、中期、後期の定期検診時、および分娩前後の採血時に血液を採取し、単核球細胞(リンパ球と単球)、NK細胞、細胞制御性T細胞の分離を行い、サンプル採取を進めました。マイクロアレイなどを用いてmRNAおよびmiRNAの網羅的解析を開始し、Th & NKバランスに関連するカスケードを中心にバイオインフォマティクス解析を進めました。
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