研究概要 |
日本における早産の確率は約5%であり、早産の主な原因であるCAMは全妊婦の約1%が発症している。本研究では、妊婦の胎盤および羊膜・絨毛膜・脱落膜中におけるトリプトファン分解酵素の一種であるIndoleamine 2,3-dioxygenase : IDOのタンパク発現レベルを検討し、絨毛膜羊膜炎(CAM)および早産との関連性について検討した。検体は、川崎医科大学附属病院で分娩した妊婦191名を対象とした。その結果、健常な妊婦の胎盤サンプルをcontrol群とし、妊娠初期のサンプルとIDO発現を比較したところ、妊娠初期のサンプルはcontrol群より約0.77倍で低値を示した。また、CAMの病歴を有する患者由来のサンプルと比較したところ、CAMの病歴を有するサンプルはcontrol群より約2.29倍高値を示した。 CAMの病歴を有する患者では、膣内における細菌の上行感染によってマクロファージや好中球が集積し、それに伴いIL-8、TNF-αなどの炎症性サイトカインが発現し、プロスタグランジンなどの子宮収縮物質を産生する。また、IL-8はリポ多糖(lipopolysaccharide : LPS)のような細菌による刺激でも産生される。LPS刺激によってIDOの発現は誘発されるため、CAM患者由来のサンプルでのIDO発現は高値を示したのではないかと示唆された。CAMの重症度とIDO発現に相関は認められなかったが、CAMIIが比較的高値を示した。今後、胎盤および絨毛膜・羊膜・脱落膜における局所的なIDO発現についての検討を免疫染色により行い、CAMの重症度とIDO発現について再検討する必要がある。また、CAMは早産の主な原因であることから、IDO発現が早産に関しても相関性を示す可能性も考えられた。
|