研究課題
近年、内耳研究領域の中で転写因子が注目されている。Gate遺伝子のハプロ不全による遺伝性聴覚異常が報告されていることから、聴覚機能に転写因子であるGATA3が何らかの役割を担っていることが示唆されている。一方、マウス胎仔の耳胞や内耳でGATA3が発現しており、発生過程においても重要な機能を担っていると考えられる。そこで、本研究では転写因子GATA3に着目して、内耳発生におけるGATA3の役割を解析することを目的とした。今までにも(Gate3ノックアウトマウスを用いた実験が試みられたが、さまざまな実験上の制限から十分な解析ができなかった。そこで、今回はトランスジェニックレスキュー法という新たな方法を用いて、内耳におけるGATA3の機能を完全に欠損させたマウスを作製し、解析を行うこととした。今までに、このマウスを用いた予備実験から、内耳低形成の表現型があるという結果を得ており、これがヒトの疾患である内耳奇形に類似していることが分かった。このことから、本研究は内耳発生過程のGATA3の機能解明という基礎的知見だけでなく、臨床的に原因不明とされる内耳奇形疾患の病因解明の一助にもなるものと期待される。平成22年度は、トランスジェニックレスキュー法を用いて得られた、内耳におけるGATA3の機能を完全に欠損させたマウスの、内耳低形成の成因を探ることを計画した。解析方法として、まず胎生10.5日から18.5日齢までの経時的形態変化を調べ、同時期のコントロールマウスの内耳形態と比較しながら、内耳発生におけるGATA3の時間的作用点を明らかにすることとした。平成23年度も引き続き解析を行ってきたが、予備実験でみられた内耳低形成の表現型が全ての個体でみられるわけではなく、解析数を増やしてきたが、いまだ十分な数に至っていない。今後も解析を継続していく予定でる。
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Acta Otolaryngol
巻: Vol. 131 ページ: 1020-1024
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