唾液腺悪性腫瘍の中でも唾液腺導管癌は高率に遠隔転移を起こし特に予後不良な癌種である。その発癌および遠隔転移、隣接組織浸潤に関与する分子メカニズムはよく分かっていない。唾液腺導管癌は、その病理学的特徴において乳腺乳管癌に類似していることからHER2/neuの発現を評価した報告やその他の有名な癌遺伝子(EGFR、K-Ras、AR、ER)の発現を免疫染色などで評価した報告はこれまでにあるものの、唾液腺導管癌における網羅的な遺伝子発現解析はこれまで皆無であった。そこで、唾液腺導管癌の分子メカニズムの解明を目的とし、千葉大学医学部付属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科において切除摘出した臨床検体を用いて唾液腺導管癌組織および同患者の正常唾液腺組織における遺伝子発現を網羅的に解析することを計画した。 これまでに採取を行った7症例からtotal RNAを抽出した。7症例のうちRNAの品質が良好な4症例(癌部と正常部のペア)のRNAサンプルに対して、アジレント社製マイクロアレイ(Sure Print G3 Human GEマイクロアレイキット8x60K)およびマイクロRNAアレイ(Sure Print G3 HumanmiRNAマイクロアレイキット8×60K Rel.16.0)を用いてタンパクコード遺伝子、マイクロRNA、long non-coding RNAの発現プロファイルを作成した。現在、特にマイクロRNAの発現変動を基点とした機能解析を行っている。
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