好酸球性副鼻腔炎の病態機序は解明されておらず、今回の研究では真菌を用いたアプローチでその機序解明を目標とした。 当科で副鼻腔炎手術を施行した51例の血液あるいは鼻茸を用いて免疫学的検討を施行した。51例のうち、鼻茸中に好酸球の浸潤を認めない従来型副鼻腔炎は26例、好酸球の浸潤を認める副鼻腔炎は25例であった。まず、鼻茸に浸潤しているT細胞の検討では、従来型、好酸球浸潤型ともに95%がCD45RO陽性であり、memoryT細胞であることが明らかとなった。そこで、T細胞で発現されているcytokineあるいはregulatorについてmRNAのレベルで比較してみると、IL-5、IL-13では従来型に比較して、好酸球浸潤型では有意な発現増加を認めた。INF-γ、IL-17A、IL-25、T-bet、GATA3、RORCでは有意差を認めなかった。鼻茸中のB細胞の検討では、鼻茸中でIgEを産生しており、εGLTの発現も認めることから、鼻茸局所でのクラススイッチの可能性も示唆された。好酸球浸潤型副鼻腔炎の病態としてTh2系の免疫機構の関与が考えられる結果であった。 好酸球浸潤型の副鼻腔炎の鼻汁、あるいは鼻茸の培養から真菌が検出されたのは8例であった。菌種としては、Candida、Cladosporium、Aspergillus、Penicilliumなどが検出された。末梢血中単核細胞を、局所から検出された真菌を含めた数種類の抗原で刺激し、培養上清中のIL-5値を検討した。その結果、Candidaが局所から検出された症例では高率に、PBMC刺激でCamdidaのみに反応を示した。一方で、Penicilliumが検出された症例では、Penicillium以外の菌種にも反応を示していた。従来型では真菌抗原刺激に反応を示さない症例も多く認められた。従来型と好酸球浸潤型を比較すると、検出された真菌抗原で刺激した際のcytokine産生において、好酸球浸潤型の方が産生量は高い傾向にあった。一部の好酸球浸潤型副鼻腔炎で、真菌の関与が示唆された。
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