加齢性難聴においても、多臓器の加齢性変化と同様にミトコンドリアDNAの変異蓄積が病態に寄与していることが示唆されている。またミトコンドリアDNAの多型と糖尿病、メタボリックシンドローム、長寿などとの関連などが明らかになって来た。われわれは内耳においてもミトコンドリアDNA多型と難聴の関連を予想し、加齢性難聴患者と正常聴力の高齢者から採取した血液から抽出したDANを用い、ミトコンドリアDNAの変変異、多型の解析を施行した。加齢性難聴患者と健常者から書面で同意を得た上で引き続き採血を施行した。ここから抽出したDNAを用いてミトコンドリアDNAの多型解析と変異解析を施行した。加齢性難聴群と健常群での差異の比較や、患者データとして聴力を把握しているので、さらにこれを継続し症例数を増やした上でこの数値との相関を検討する。 またこれに平行して、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科で採取されたすべて別家系の遺伝性難聴疑いの患者血液から抽出したDNAを用いてミトコンドリアDNAの変異、多型解析を施行した。この結果、マクロハプログループNとMの間で、有意な差は認めなかった。しかしミトコンドリアサブハプログループD4bで、遺伝性難聴疑いの患者群ではコントロール群よりも有意に多かった。ここからミトコンドリアDNAの多型が難聴の発現に寄与する可能性が示唆された。実際、個々の多軽を解析したところいくつか有意に置換されている部位を認めた。本研究はミトコンドリアハプログループと難聴を関連づけた最初の研究であり、更に発展させる予定である。
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