我々はproto-oncogeneとして知られるRETレセプターの悪性黒色腫における機能について着目した。receptor tyrosine kinaseであるRETのリガンドはglial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)であり、そのシグナルはMAPKやP13Kを介し、細胞増殖や浸潤に関わる。今回の研究ではRETの691番目のグリシン(G)がセリン(S)に置換される遺伝子多型であるG691S RET polymorphismに焦点を当てた。我々は複数の悪性黒色腫細胞株において、G691S RET polymorphismがGDNF刺激時にこれらのシグナル伝達系のリン酸化を亢進、延長し、悪性黒色腫の増殖能および浸潤能を有意に増強することを証明した。またこれらのGDNFによって増強された増殖能は、MEK1 inhibitorであるPD98059にて有意に抑制され、浸潤能はP13K inhibitorであるwortmanninによって有意に抑制されることが解った。さらに臨床サンプルを用いた解析では、より高い神経向性を持つ悪性黒色腫であるdesmoplastic subtypeではG691S RET polymorphismが有意に高頻度で内包されることが解った。これらのことからG691S RET polymorphismが悪性黒色腫の浸潤転移に重要な役割を果たしていることが示唆され、RETをターゲットとした悪性黒色腫の治療の可能性が示された。
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