proto-oncogeneとして知られるRETレセプターの頭頸部癌における機能について着目した。RETのリガンドはglial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)であり、そのシグナルはMAPKやPI3K上に及ぶが、我々はG691S RET polymorphismがこれらのシグナル伝達系を亢進し、頭頸部癌の増殖と浸潤を増強する可能性を見いだした。G691S RET polymorphismが頭頸部癌に及ぼす影響を解析するために、頭頸部癌細胞株においてRET wild typeとG691S RETを内包する細胞株をそれぞれ確立し、リガンド刺激後の細胞増殖能、浸潤能をMTT assayおよびinvasion assayで比較検討した。その結果、G691S RETを内包する細胞株ではGDNF刺激後に細胞増殖能、浸潤能がRET wild typeよりも亢進することが解った。またリガンド刺激後のRET下流にあるERKやAKTなどのシグナル伝達因子のリン酸化をウェスタンブロットにより比較検討したところ、G691S RETを内包する細胞株ではGDNF刺激後にERKおよびAKTのリン酸化がRET wild typeよりも亢進、延長することが解った。また頭頸部癌において神経浸潤傾向を示す症例ではG691S RETが高率に内包されていることが解った。これらの結果からG691S RETは頭頸部癌の増殖、浸潤を亢進させる機能を有したpolymorphismであり、再発・予後に関係する可能性が示された。
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