T細胞は抗原提示細胞からT cell receptorを介して抗原提示を受ける際、共刺激分子の働きによって、T細胞活動を促進、もしくは抑制の方向に傾ける。22年度の研究では、アレルギー抑制作用のあるCpG-DNAが、抗原提示細胞であるヒト末梢血B細胞上の抑制系の共刺激分子リガンドであるPD-L1の発現を促進させることを明らかにした。23年度は、CpG-DNAのよって、発現が亢進したPD-L1がどのような機能を持つかということについて研究を行った。MACSシステムを用いて、スギ花粉症患者の末梢血からB細胞とCD4+cell(T細胞)を分離した。B細胞はあらかじめ、CpG B typeで刺激しておき、CpGを洗浄して除去した後、CD4+cell、スギ花粉抗原であるCry j1も混合して培養した。24時間後、培養液中のTh2サイトカインである、T細胞から産生されるIL-5、IL-13の濃度をEHSAにて測定した。その結果、CpG処理したB細胞を添加しなかった群では、Cry-j1の刺激でIL-5、IL-13の産生は著明に増加していたが、CpG処理したB細胞を加えることによって、IL-5、IL-13の産生は著明に抑制された。また、PD-L1のリガンドである可溶性PD-1のキメラ蛋白を添加したところ、その抑制は解除された。これは、添加された可溶性PD-1のキメラ蛋白がB細胞上のPD-L1と結合して、CD4+cell上のPD-1と結合できずに、抑制の刺激がT細胞に入らなかった可能性が考えられる。以上から、CpGの刺激によって発現が亢進したPD-L1がT細胞上のPD-1と結合し、T細胞の活動を抑制し、結果的にIL-5、IL-13の産生を抑制した可能性が考えられる。また、T細胞活動促進系の共刺激分子のリガンドであるB7RP-1やCD30Lの発現はCpG B typeによって抑制された。CpGは、抗アレルギー作用を持つが、抗原提示細胞上の共刺激分子リガンドの発現変化が、その一端を担っている可能性が考えられた。今後、共刺激分子リガンドの発現を抗原特異的に制御できれば、アレルギー性鼻炎の新しい治療につながる可能性があると考えられる。
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