マウス内耳に発現する遺伝子群をマイクロアレイを用いて解析を行った結果、マウス蝸牛内にユビキチンの1種であるUbA52が高発現していることが確認されている。UbA52はユビキチンドメインとリボゾームタンパク質A52からなるタンパク質であるが、E3リガーゼによりユビキチンドメインがタンパク質に付加されることにより、ユビキチン付加されたタンパク質のプロテアソームでの分解が促進されることが知られていることより、内耳におけるタンパク質の品質管理に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 本研究では内耳においてUbA52を介したユビキチン・プロテアソーム系がどのような役割を果たしているかについて詳細に検討を行うことを目的に、マウス内耳よりtotalタンパク質を抽出し、2次元ゲル電気泳動法にて分離した後、抗ユビキチン抗体にてWestern blot法を用いてUbA52のターゲットとなるタンパク質を同定した。次にゲルよりタンパク質サンプルを採取し質量分析による遺伝子の同定を行った。その結果、システインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(CSD)とアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)が同定された。 システインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(CSD)とアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)およびUbA52タンパクの相互作用についての機能解析を行うため、マウス内耳よりRNAを抽出し、cDNAを合成した後に、動物細胞での発現ベクターおよびGFP融合タンパク発現ベクターのクローニングを行い結合の確認を行った。また、抗体を用いた免疫共沈降による結合の確認を行った。さらにまた、各種プロテアソームインヒビターを用いた場合に内耳に蓄積するタンパクの量的変化に関する検討を行った。
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