アッシャー症候群(USH)は、網膜色素変性症に感音難聴を合併する常染色体劣性遺伝性疾患である。USHは、臨床症状によりタイプ1からタイプ3の3つのタイプに分類され、さらに原因遺伝子がマップまたはクローニングされたものはサブタイプとして分類されている。現在までに、1B~1H、2A、2C、2D、3A、3Bの12のサブタイプが知られている。 臨床症状よりタイプ1と診断した5人の患者を対象として、タイプ1B、1Dの原因遺伝子であるMYO7A、CDH23の遺伝子解析を行った。遺伝子解析は、白血球より抽出したゲノムDNAをテンプレートとして、原因遺伝子の全エキソン(MYO7A:エキソン1~49、CDH23:エキソン1~69)をPCRダイレクトシーケンス法にて解析した。 4人のタイプ1患者において5種の疾患原因と考えられる変異を同定した。5種の変異の内訳は、ナンセンス変異2種、欠失変異1種、ミスセンス変異2種であり、全ての変異は日本人の正常コントロールにおいて1例にも認められなかった。MYO7Aの1種(p.Ala771Ser)、CDH23の1種(p.Tyr1942SerfsX23)は現在までに報告されていない新規の変異であった。p.Tyr1942SerfsX23は、エキソン44~46を含む5078塩基が欠失する巨大欠失変異であった。 欧米におけるアッシャー症候群タイプ1患者の遺伝子解析では、約70~80%の患者がMYO7AまたはCDH23に遺伝子変異を持つことが報告されている。本邦患者でも、5人中4人(80%)においてMYO7AまたはCDH23に遺伝子変異が同定されたことは、欧米人と同様にこの2種の遺伝子変異によってUSHを発症する患者が多いことを示唆している。
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