スギ花粉症診療においては、季節性アレルギー性鼻炎に対する鼻噴霧用ステロイド薬の臨床効果が他剤に比べて高い"というEvidenceと"スギ花粉症に対する鼻噴霧用ステロイド薬の使用頻度が低い"というPracticeの間に、Evidence-practice gapが存在すると考えられている。本研究は、このEvidence-practice gapを小さくするための方策を確立し、治療効果、QOL、患者満足度を高めることを最終的な目標とする。 今回、春季アレルギー性鼻炎(SAR)患者の受診動向と医師による薬物治療の実態を把握するため、企業健康保険組合のレセプト(診療報酬明細書)データベースを利用した2次データ解析研究を行った。2005~2011年の1~4月の医科・調剤レセプトを対象とし、適格基準を満たしたレセプトの患者を、春季アレルギー性鼻炎患者と定義した。SAR患者の医科・調剤レセプトを対象として、薬剤処方パターンの推移、診療科ごとの薬剤処方機会の割合について検討を行った。その結果、過去6シーズン中に患者に処方された薬剤処方の組み合わせは、15歳以上の成人では、第2世代抗ヒスタミン薬単独処方が、30%から25%ほどに減り、第2世第抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬が処方されるパターンが20%から23%にやや増加する傾向が認められた。また、2011年シーズンに各科で処方薬剤機会の割合をまとめると、成人に対して第2世代抗ヒスタミン薬を処方する機会の割合は、それぞれ53.9、59.7%、鼻噴霧用ステロイド薬は、それぞれ22.5、15.9%、抗ロイコトリエン薬は、それぞれ、11.5、11.3%であった。 今回の研究によって、成人春季アレルギー性鼻炎に対する薬物治療は、第2世第抗ヒスタミン薬が中心であり鼻噴霧用ステロイド薬の処方頻度は低いことが確認された。鼻噴霧用ステロイド薬の処方機会は増えているものの、内科のみならず耳鼻咽喉科でもその処方は限定されているものと考えられた。
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