研究課題/領域番号 |
22791591
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
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キーワード | 好酸球性副鼻腔炎 / トロンビン / 組織因子 / 組織因子経路インヒビター / 粘液産生 / 鼻茸 / ヘパリン / 凝固因子 |
研究概要 |
収集した鼻副鼻腔疾患患者の鼻汁中の遊離型組織因子と組織因子経路インヒビターの濃度を測定し、コントロール群、アレルギー性鼻炎群、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎群の4群で比較した。遊離型組織因子の濃度に各群間で差は認めなかったが、組織因子経路インヒビターはコントロール群に比較して好酸球性副鼻腔炎群で高値であった。また、鼻茸および下甲介粘膜の免疫染色で、上皮細胞と浸潤する好酸球の顆粒に組織因子が存在することを確認した。組織因子経路インヒビターは組織因子/活性化血液凝固第W因子複合体や活性化血液凝固第X因子(Xa)といった外因系血液凝固カスケードの開始点を阻害するため,生体由来の抗凝固因子としては最も強力な作用を発揮する。また、アゴニストとして内皮細胞などに働くことが知られている。好酸球性副鼻腔炎の局所において組織因子経路インヒビター濃度が高値であったことや組織因子が鼻副鼻腔組織に確認できたことは、凝固および抗凝固系の活性化が上気道炎症に強く関わっていることを示唆した。 また、培養細胞を用いた検討では、気道上皮細胞にトロンビンを作用させると培養液中の組織因子および組織因子経路インヒビター共に濃度が増加することがわかった。トロンビン受容体のアゴニストでも同様の結果を得た。 さらに、抗凝固剤ヘパリンの培養上皮細胞に対する抗炎症作用を検討した。ヘパリンはTNF刺激で産生される上皮細胞からのMUC5AC、VEGF、IL-8産生を抑制することを確認した。ラットLPS鼻炎モデルへのヘパリン点鼻投与によって杯細胞化生や好中球・好酸球浸潤は有意に抑制された。 好酸球性副鼻腔炎はステロイド以外に有効な治療法のない疾患である。上気道炎症における凝固因子・抗凝固因子の役割についての基礎的研究は新しい治療法の発見につながる意義のあるものであると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りモデル動物を用いた検討に着手することができた。患者検体を用いた基礎的な検討は検体数や量に限界があり、予定通りとはいかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
患者検体を用いた検討については今後も組織を中心に収集を続け、検討を進める。アレルギーモデル動物を用いでヘパリンの消炎効果を確認する。培養細胞では、上皮細胞以外に好酸球の顆粒にも組織因子を確認したことから好酸球と凝固系の関係も検討したい。
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