研究課題/領域番号 |
22791593
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
瀧 公介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20359772)
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キーワード | 聴覚 / 下丘 / vGluT / 下行性投射 |
研究概要 |
下丘の投射ニューロンに対する上行性入力と下行性入力のシナプスの形成パターンを解析・比較し、下丘における神経回路の特徴を明らかにすることで聴覚特異的な感覚情報処理原理について理解することを目的としている。この研究計画においては、下丘の投射ニューロンと上行性入力あるいは下行性入力の同時標識が求められるが、特に後者については細胞体から遠く離れた軸索の末端まで標識されている必要があるため、技術的な困難さがあった。初年度ではそれぞれの標識に用いる標識法を確定させ、特に後者については組換えシンドビスウイルスを用いることに決着させた。本年度ではこの組み合わせで特に後者についてはトップダウンの情報処理介入を担うと考えられる大脳皮質からの下行性投射を選んで動物実験を実施し、複数(6以上)のサンプルを得た。その解析を進めるなかで、当初の目的であるvGluTsによって検出されるニューロン間連絡の解析に加えて、まずは標識された聴覚皮質から中脳への下行性投射だけでもまず分析する価値があることが明らかになり、各軸索終末部の形態やその三次元的分布について研究及び学会発表(解剖学会3月)を行い、また分布様式の解析については学際的展開によって数理解析の試みにつながっている。加えて音響関係および画像解析関係で共同研究を進めることになった京都大学情報学講座への研究協力の実施は応用領域での成果が論文となったので実績として報告する。これらの予期しない研究発展のため、vGluTs陽性終末の解析については発表に至るデータに到達していないが、神経科学会や解剖学会における情報収集により、共焦点レーザー顕微鏡でのシナプスサイズ蛍光標識像の鮮明化のための数理的処理によるデコンボリューション操作や、下丘における神経連絡像を多く得るための下丘のコア領域とベルト領域を区別して動物実験を設定することなど役立つと考えられるアイデアを得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予期しない研究進展のため、vGluTs陽性終末の解析については発表に至るデータに到達していないが、関連領域での共同研究の成果が論文となり、また下行性投射の形態および軸索分布についても学会発表を実施し、かつ」論文化の準備を進めている段階で、総合すると順調あるいは当初予定以上の進展と考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
下行性投射の形態および軸索分布についても学会発表を実施しまた論文化の準備を進めている。またその数理解析についても試みを始めている。下丘におけるシナプス像の解析については現有のサンプルの解析を進めてゆくと共に、数理的処理によるデコンボリューション操作による共焦点レーザー顕微鏡で取得した画像の鮮明化や、下丘のコア領域とベルト領域を区別して動物実験を設定することで下丘におけるニューロンと投射線維の密集部位をなるべく重ねることなどの工夫が可能である。
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