痙攣性発声障害の治療法である甲状軟骨形成術II型によって声の震えが改善するのは、長期的な声門開大による発声様式の変化が中枢に伝えられ、神経・筋組織に影響を及ぼしていると予想した。 そこで甲状軟骨正中切開声門開大動物モデルを用いて、長期的な声門閉鎖不全状態が内喉頭筋や神経に与える影響を詳細に検討することで、痙攣性発声障害に対する甲状軟骨形成術II型の効果が間接的に神経・筋に影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした研究をおこなった。 甲状軟骨正中切開による声門閉鎖不全動物モデル(甲状軟骨形成術II型モデル)の作成を行った。Wistar系ラットを用い、全身麻酔下にラット甲状軟骨を正中で切開した後、以下の3種の処置モデルを作成する:①正中切開のみ(対照群)、②シリコンシムを甲状軟骨切開部に挿入し9-0ナイロン糸で固定する(甲状軟骨形成術II型群)、③シリコンシムを甲状軟骨切開部に挿入し9-0ナイロン糸で固定した状態で12週経過させた後にシリコンシムを除去したモデル(声門閉鎖不全後改善群)、④無処置ラット(コントロール群とした。 ラットの喉頭は小さいこと声門開大幅は個々で異なること、シリコンシムは1mm程度の大きさなため、固定が非常が困難であった。 手術操作による組織学的変化を認めたが、甲状軟骨形成術II型のモデルとしては甲状軟骨の開大状態がシリコンシムで開大維持できているかは不明であったこのなどの理由で不適当であった。 小動物の選択や開大維持の材料(たとえばチタンなど)の選択工夫が必要であると考えられた。
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