研究概要 |
蝸牛のラセン神経節細胞はコルチ器で電気信号に変換・コード化された音情報を聴覚中枢に伝えるという重要な役割を担っているが、ラセン神経節細胞の発生・分化のメカニズムは依然として不明である。2010年に我々はPC3が胎生期のラットの蝸牛ラセン神経節細胞に発現しており、ラセン神経節細胞の発生・分化に関与している可能性を報告した(Hayashida, Neuroreport)。今回は、PC3(Tis21/BTG2)がラセン神経節の発生・分化の際に果たす役割をより明確にするために、PC3-GFP knoch-inマウス(PC3遺伝子を欠失しており、代わりにGFPというマーカー遺伝子を組み込んだマウス)を用いて、その分化・発生について形態的かつ機能的に解析を行った。 具体的には、Professor Huttner(ドイツ)より供与を受けたHeterozygous PC3-GFP knock-inマウス、HomozygousPC3-GFPknock-inマウスの凍結組織について、胎生(E)E12.5日、E13.5日、E14.5日、E18.5日、生後(P)P4日のマウス頭部の凍結切片を作成した。コントロールとして、野生型マウスの頭部の凍結切片も作成した。ラセン神経節細胞のマーカーとしてanti-TUJ1抗体を用い、また核のマーカーとしてHoechstを用いた多重免疫組織染色を行った。蛍光顕微鏡下(現有)にてGFP(PC3)の蝸牛内における局在を観察、記録した。また、E13.5~P4のそれぞれのステージにおけるラセン神経節細胞数、N/C比、ローゼンタール管内におけるラセン神経節細胞密度を測定している。これらの測定データを野生型マウス、Heterozygousマウス、Homozygousマウス間で、あるいはステージ間で統計学的に比較検討を行い、PC3がラセン神経節細胞の発生の際に果たす役割について考察を行っている。
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