ラセン神経節細胞は、蝸牛有毛細胞によって機械的エネルギーから電気的エネルギーへと変換された音情報を脳へと伝達するという聴覚機能において極めて重要な役目を担っている。しかしながら、これまでラセン神経節細胞の発生・分化のメカニズムはこれまで不明であった。最近我々は増殖抑制遺伝子の一つであるPC3が胎生期の蝸牛ラセン神経節細胞に発現しており、ラセン神経節細胞の発生・分化に関与している可能性を初めて報告した。本研究はこの結果をもとにして、単離ラセン神経節細胞を用いたPC3発現抑制と過剰発現の効果を見ることにより、PC3のラセン神経節細胞の発生・分化に対する関与をより明確にすることを目的とした。まず、胎生14日目、胎生16日目、胎生20日目、生後4日目の正常ラットからラセン神経節を採取し、トリプシン処理によって細胞単位に単離し、単離培養ラセン神経節細胞におけるPC3の細胞内局在の確認を行うために、単離直後と1日間37℃、CO_25%の環境下でその局在が変化しないことを確認した。胎生14日目、胎生16日目のラットラセン神経節細胞については、ラセン神経節細胞の採取量が少なく、培養条件が確立するに至らなかったが、E20ではPC3は細胞質に、生後4日目では核にその局在を認め、培養1日後もこの局在に変化はなかった。今後は引き続き、準備してあるpc3.siRNAを導入し、3日間培養後にPC3タンパクの発現抑制により生じるラセン神経節細胞の形態変化について、ネガティブコントロールとなるsiRNAを導入したコントロールと比較検討する、という予定実験を遂行する。
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