研究概要 |
1.Retrospectiveな内反性乳頭腫の手術症例の検討:21例の手術症例について検討をおこなった。21例中血中扁平上皮抗原の上昇を示した症例は17例(80.9%)であった。一方上顎癌11例では27.2%,副鼻腔炎22例では0%であり,内反性乳頭腫診断,再発診断に有用であった。悪性転化を示した症例はなかった。 2.生検・摘出標本を用いたHPV,EBV感染有無とウイルス数の検討:内反性乳頭腫の新鮮凍結標本を13例で得た。その結果HPV16を4例に,HPV33を2例に認め,HPV陽性率は46.1%であった。一方,上顎癌(11例)では27.3%,副鼻腔炎(39例)では7.6%にHPV16の感染を認めた。EBVは内反性乳頭腫,上顎癌,副鼻腔炎のいずれでもLMP-1発現を90%以上の症例で認め,有意の差を認めなかった。 3.HPV16陽性サンプルについてウイルスコピー数をrealtime PCRを用いて測定した。その結果,内反性乳頭腫では50 ng genomic DNA当たり406.2コピー,上顎癌では236コピー,副鼻腔炎では7.8コピーであり,内反性乳頭腫で最もコピー数が多くみられた。また,内反性乳頭腫の一部に癌化がみられた症例ではウイルスコピー数が1524.1と高く,またホストゲノムへのintegrationがみられた。 当該年度の研究から,血中扁平上皮抗原の測定が内反性乳頭腫診断に有用であること,また乳頭腫発生,癌化に乳頭腫ウイルス,特にHPV16が関与している可能性が強く示唆された。また研究手法を確立するために,頭頸部癌組織を用いて,HPVの検出を行い,扁桃癌,舌根癌でHPV16の感染を多く認めた。扁桃癌では内反性乳頭腫の100-1000倍のウイルス量を示した。SCCA1,2の遺伝子発現は内反性乳頭腫では副鼻腔癌や副鼻腔炎と比較し多かった。mRNA発現のSCCA2/1比は,内反性乳頭腫と副鼻腔炎では同等であったが,副鼻腔癌で有意に高値だった。以上については論文掲載が確定している。
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