研究概要 |
1.Retrospectiveな内反性乳頭腫の手術症例の検討:22例の手術症例について検討をおこなった。22例中,血中扁平上皮抗原(SCCA)の上昇を示した症例は18例(81.8%)であった。内反性乳頭腫再発例では90.3%であった。一方, 上顎癌11例では27.2%,副鼻腔炎22例では0%であり,内反性乳頭腫診断,再発診断に有用であった。SCCAサブタイプSCCA1,2の遺伝子発現は内反性乳頭腫では副鼻腔癌や副鼻腔炎と比較し10倍以上多かった。mRNA発現のSCCA2/1比は,内反性乳頭腫と副鼻腔炎では同等であったが,副鼻腔癌で有意に高値を示し、悪性化と関連する可能性が示唆された。2.生検・摘出標本を用いたHPV, EBV感染有無とウイルス数の検討:内反性乳頭腫13例を検討し、HPV16を4例に,HPV33を2例に認め,HPV陽性率は46.1%であった。一方,上顎癌(11例)では27.3%,副鼻腔炎(39例)では7.6%にHPV16の感染を認めた。EBウイルスは内反性乳頭腫,上顎癌,副鼻腔炎のいずれでもLMP-1mRNA発現を90%以上の症例で認めた。3.HPV16陽性サンプルについてウイルスコピー数を測定した。内反性乳頭腫では50 ng genomic DNA当たり406.2コピー,上顎癌では236コピー,副鼻腔炎では7.8コピーであり,内反性乳頭腫で最もコピー数が多くみられた。また,内反性乳頭腫の一部に癌化がみられた症例ではウイルスコピー数が1524.1と高く,またホストゲノムへのインテグレーションがみられた。 以上より、血中扁平上皮抗原の測定が内反性乳頭腫診断に有用であること,また乳頭腫発生,癌化に乳頭腫ウイルス,特にHPV16が関与している可能性が強く示唆された。
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