研究概要 |
従来,再生医療では主に骨髄由来の幹細胞が注目され利用されてきたが,その採取には骨穿刺など患者に危険や侵襲を伴い,得られる細胞数も限られていた。それに対し,脂肪由来の幹細胞は,手術で本来捨てられる際の脂肪組織からも採取でき,また,治療に必要となる十分な細胞数を得ることが可能である。容易に細胞採取が可能であり,また,自家移植であるため,倫理的な問題も少なく安全性からも有利な点が多い。平成22年度,我々はまず動物(ラット)での脂肪由来幹細胞の単離,および培養を行った。採取した脂肪組織はコラゲナーゼ処理して分解し,脂肪組織由来の細胞群を採取することが可能であった。また,この細胞群を培養させることも可能であった。動物での安定した採取,培養技術が確立したことを確認した上で,培養法をヒトでも応用させた。我々は説明と同意の上で,実際にヒトの手術標本から不要となった脂肪組織を採取した。同様な方法でヒトでの脂肪由来幹細胞の単離および培養が可能であることを確認した。この培養したヒトの細胞特性に関して,フローサイトメトリーを用いて調べた。間葉系幹細胞に関連した細胞表面マーカーであるCD29,CD90,CD105の発現率を調べた結果,CD29,CD90,CD105の発現率が66.9%,83.3%,65.6%となり,得られた細胞が幹細胞の性質を有している可能性が高いことを確認することができた。現在,あらかじめ単離されたヒト脂肪由来幹細胞を購入の上培養し,蛍光色素による生体染色を行っている。今後は,標識した細胞を用いてヌードラットへの移植を行い,創傷治癒への及ぼす影響について研究を進めていく予定である。
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