上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)は、様々な悪性腫瘍で過剰発現しており、EGFRの阻害剤は腫瘍に対する効果的な分子標的治療薬として注目されている。しかし、重篤な副作用である急性肺障害による死亡例が頻発しているため、その原因解明が急務となっている。そこで、この研究ではEGFRに対する分子標的治療薬による急性肺障害の原因究明とその抑制方法を検討した。 これまでの研究により、腫瘍細胞をEGFR阻害剤で処理すると、EGFR阻害剤処理をしていない細胞と比べIL-6の発現量が有意に増加していたことが判明した。そこで、急性肺障害は腫瘍細胞から産生された1L-6が原因ではないかと考え、EGFR阻害剤で処理した腫瘍細胞と肺線維芽細胞を三次元共培養し、線維芽細胞からタンパク及びRNAを抽出してタンパクと遺伝子の発現量を検討したところ、線維芽細胞において線維化のマーカーであるコラーゲンとα-actinの発現量が増加していた。また、線維芽細胞にあらかじめIL-6R中和抗体を反応させ、腫瘍細胞と三次元共培養するとコラーゲンやα-actinの発現量の増加を抑制することができた。これらの結果から、EGFR阻害剤で処理された腫瘍細胞から産生されるIL-6が線維芽細胞の線維化を誘導している可能性が示唆され、EGFR阻害剤による重篤な副作用の一因となっているのではないかと考えられた。
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