研究課題
聴覚伝導路の可塑性を調べるため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いて臨床および基礎研究を行った。臨床研究では耳鳴患者16人を対象とし、左大脳聴覚野に1kHz、運動閾値の110%強度のrTMS治療を行った。rTMS治療直後より耳鳴が有意に改善する結果が認められ、耳鳴そのものを抑制する画期的な治療として、国内外の学会および論文にて報告した。rTMSによる聴覚伝導路への影響について調べるため、動物モデルを用いてrTMS聴覚野刺激を加え、その聴覚伝導路の可塑性をImmediate early genes(IEGs)の変化で組織学的に調べた。IEGsは様々な細胞刺激により迅速に活性化され、その変化をみることで神経活動を組織学的に調べることが可能である。特にIEGsの一つであるc-fosは活動神経の機能解剖的指標としてもっとも広く使われている。動物はCD-1マウスを用い、磁気刺激にはMagstim Rapid[○!R](Magstim社)と動物用直径50mmの8型刺激コイルを使用した。45%出力強度で左聴覚野を1Hz、420回刺激した。またコントロールとしてシャム刺激ではコイルを90度傾け、刺激が頭蓋内に伝わらないようにした。マウスは刺激1時間後、1日後、1週間後にそれぞれ脳を摘出固定し、そのc-Fos発現の変化を観察した。Sham刺激群に比べ、rTMS刺激群では刺激1時間後でマウス左聴覚野にc-Fosの発現を明らかに認めた。その発現は聴覚野に1日後までみられ、1週間後の標本ではコントロール群の状態に戻っていた。一方rTMS刺激によりc-fosの発現は内側膝状体には認めなかった。IEGsはシナプス可塑性にも関連しており、耳鳴に対するrTMS効果の重要な機序の可能性として考えられる。
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ENTONI
巻: 121 ページ: 13-19
Auris Nasus Larynx
巻: (Epub ahead of print)