研究1:2型糖尿病によりインスリンによる治療を要した重症群11症例と経口血糖降下剤で治療し得た軽症群7症例、糖尿病を有しないコントロール群26症例のヒト側頭骨連続切片を光学顕微鏡下に観察した。 結果:重症群でコントロール群と比較して血管条毛細血管と螺旋血管の壁の有意な肥厚を全回転で認めた。血管条の萎縮は重症群でほぼ全回転コントロール群と比較して有意な萎縮を認めた。重症群および軽症群の両群の基底回転でコントロール群と比較して有意な外有毛細胞の欠損を認めた。各群間に内有毛細胞および螺旋神経節細胞は有意な差は認められなかった。また、螺旋血管の壁の肥厚と傷害された外有毛細胞の割合、血管条毛細血管の壁の肥厚と血管条の面積の間にそれぞれ相関関係は認められなかった。 研究2:1型と糖尿病についても同様の検討をおこなった病群。1型糖尿病26耳とコントロール群30耳を比較し、研究1と同様の結果を得た。螺旋靭帯についても追加検討を行った。 糖尿病患者における難聴は蝸牛内の細小血管症と血管条および外有毛細胞の障害により起こると考えられた。細小血管症が引き起こす血流障害だけでなく、高血糖状態による他の要素も血管条および外有毛細胞の障害を起こしている可能性が示唆された。 研究3:正円窓膜の肥厚について検討している。まずはコントロールとして、ヒト側頭骨連続切片を用いて正常群とメニエル病群の正円窓膜の厚みを測定して検討した。今後、糖尿病群と比較検討する。 研究4:2005-2008年に当院で入院加療した、突発性難聴患者100例を対象に糖尿病の有無と治癒率について検討した結果、2群間に有意差を認めなかった
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