研究概要 |
糖尿病による難聴に関する研究 ヒトの側頭骨連続切片を用いて形態学的変化を検討した。加齢変化を除くために一般的に若年発症する1型糖尿病群26耳(平均37.5歳)とコントロール群30耳(平均38.4歳)を比較した。糖尿病群で血管壁の肥厚、全蝸牛回転で血管条の萎縮、基底回転の外有毛細胞の有意な障害を認めた。中回転および頂回転で螺旋靭帯の有意な委縮を認めた。螺旋神経節細胞、内有毛細胞の障害は認めなかった。 蝸牛内の電位の形成には血管状だけでなく、さらに外側の螺旋靭帯も大きく関与していることが知られているが、これまでに我々が検討していなかった。そこで螺旋靭帯についても追加検討した。螺旋靭帯を繊維細胞のタイプによってI, II, III, IV, Vのエリアに分け、それぞれのエリアの細胞密度の低下を0 :消失、1:0から1/3、2:1/3から2/3、3:2/3以上残っているとして、各蝸牛回転ごとに判定して糖尿病群とコントロール群で比較検討した。その結果、中回転および頂回転ですべてのエリアで有意な螺旋靭帯の委縮を認めた。
|