研究概要 |
転写因子ZNF143が、Th2サイトカインの転写制御に強く関わり、アレルギー応答としての高IgE血症や好酸球増加症を生じている可能性を示し、アレルギー性疾患の新たな治療標的を提唱する研究である。ヒト鼻粘膜(通年性アレルギー性鼻炎群:AR群、および対象のRAST陰性肥厚性鼻炎群)において、Th2サイトカイン(L-4, 5, 13)および2つの転写因子(GATA-3, ZNF143)のmRNAの発現レベルを定量的RT-PCR法で比較した。測定したTh2サイトカイン3つの全ては、AR群で有意に上昇していたが、2つの転写因子の発現に差はなかった。次に、血中の総IgE値/総好酸球数と、測定したmRNA発現量の関係を比較検討したところ、IL-5の発現量と総IgE値および総好酸球数、IL-13と総IgE値の間に有意な正の相関関係があったが、Th2サイトカイン制御のマスターレギュレーターと報告されるGATA-3には、これらの因子との相関関係はなかった。しかし、ZNF143とIL-5、IL-13、総IgE値の発現量の間に有意な相関関係が存在し、ZNF143がアレルギー病態に関係している可能性が初めて示された。この結果は、ZNF143が補助活性化因子としてTh2サイトカイン制御のマスターレギュレーターのGATA-3を制御している可能性を示唆している。Th2以外のT細胞分化に関わるT-bet、RORC、Foxp3のmRNA発現量と血中の総IgE値/総好酸球数との間には有意な相関関係は存在しなかった。この結果もまた、ZNF143が特異的に高IgE血症や好酸球増加症に関与している可能性を示唆する結果であるが、そのメカニズムはこれまでの実験結果では不明であり、今後の更なる検討が必要である。
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