研究概要 |
現在の滲出型加齢黄斑変性に対する治療薬には、抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor : VEGF)製剤の硝子体投与がある。本剤は優れた有効性と良好な忍容性が確認された分子標的治療薬であるが、本薬剤投与により動脈血栓塞栓に関連する有害事象(血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性卒中等)が出現する可能性が示唆されている。本研究計画の目的は、上記副作用の発症メカニズムを解明することであり、その方法としてAutoperfused Micro Flow Chamber Systemを用いることによって血管側接着分子の条件を一定化して、抗VEGF製剤投与後のP-selectin counter-igandsの機能変化を検討する予定である。 本年度はAutoperfused Micro Flow Chamber Systemを用いた白血球ローリング観察システムを正常マウスに接続し,その実験系を北海道大学医学部眼科学教室の実験施設で確立するという計画であった。しかしながら、Autoperfused Micro Flow Chamber Systemに接続したマウスの血流が安定しないという事象が生じ,まずその対策を現在検討中である。原因は血液灌流開始数分後に凝血反応が生じて血流が停止することにあるため、ヘパリンの前投与を防止策としておこなうこととし、現在ヘパリンの適切な投与量を検討している。 今後は上記事象が解決できた時点で、本研究計画の目的である「抗VEGF製剤投与群と非投与群におけるP-selectinコーティングチャンバー上での白血球ローリングの比較」をおこなう予定である。本研究の結果は抗VEGF製剤の副作用発症メカニズムに対する理解を深めることにつながるため、臨床的な重要性が高いと考えられる。
|