研究概要 |
加齢黄斑変性(AMD)の病型の一つ、滲出型AMDの病態を特徴づける脈絡膜新生血管(CNV)はその終末期病態として線維化をきたし、視力障害の原因となる。近年,組織の線維化においてEpithelial-Mesenchymal Transition(上皮間葉移行:EMT)が着目されているが、ヒトCNV組織検体を用いた我々の検討結果ではEMTを制御する転写因子の一つSnailがヒトCNV中の網膜色素上皮細胞(RPE)に高発現しており,線維化をきたしている組織ほどその陽性率が高いことが明らかとなった。この結果はCNV中に含まれるRPEがEMTを生じていること、EMTの転写因子SnailがCNVの線維化に関与する可能性を示唆していた。 本研究では、培養ヒトRPE細胞株ARPE19を用いたin vitro実験系により、EMT関連転写因子snailの制御機構を解析した。CNV組織において発現が確認されている各種サイトカイン(transforming growth factor (TGF)-b, tumor-necrosis factor (TNF)-a, vascular endothelial growth factor (VEGF), connective tissue growth factor (CTGF)など)を用いてARPE19細胞を刺激したところ、TGF-b刺激による転写因子Snailの発現増加がRT-PCRおよび免疫組織染色によって確認された。本結果は、ヒトCNV中に存在するTGF-bがEMT転写因子Snailの発現を誘導し、CNV組織においてRPEにEMT変化を惹起するということを示唆していた。
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