以下の要領でぶどう膜炎に対するワクチン治療の実験プロトコールを設定した。(1)マウスMIFのcDNA をクローニング(2)MIF cDNA の一部を破傷風毒素で置換した変異体を作成(3)電気穿孔法により4週齢マウス筋肉内に遺伝子を導入(ワクチン接種)(4)ワクチン接種6週後に血液中の抗体価を確認(5)視細胞間レチノイド結合蛋白由来ペプチドと結核死菌含有完全フロインドアジュバントのエマルジョン、および百日咳菌毒素で EAU を惹起(6)ぶどう膜炎の重症度を経時的に観察、21日後に眼球を摘出して組織学的重症度を評価(7)別のマウスから14日後に所属リンパ節を摘出し、抗原特異的T細胞増殖反応、サイトカインプロファイルを評価 炎症性サイトカインであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)に着目して難治性眼炎症性疾患であるぶどう膜炎に対するワクチン開発を試みた。MIF DNA ワクチンを作成し、あらかじめマウスに接種した後、ヒト内因性ぶどう膜炎のモデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を惹起したところ、軽症化に成功した。ワクチンは複数作成し、そのうち2種類で有効性がみられた。しかし、いずれもワクチン接種したうちの約半数の個体では抗体価が低く、その群ではぶどう膜炎の重症度スコアに有意差が得られなかった。効率よく抗体を誘導する技術的な改良が必要であるが、将来ぶどう膜炎の有望な治療手段になる可能性があると考えた。
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