【目的】汎網膜光凝固術後に網膜血流量が低下していることは過去に報告されているが、結果は一定せず、またその病態は未だ明らかにされてはいない。そこで、汎網膜光凝固術前後において網膜主幹動脈における血液循環動態変化を測定した。 【方法】汎網膜光凝固術の適応となった増殖前、増殖糖尿病網膜症患者20名20眼(平均年齢53.1才:男性15名、女性5名)を対象とした。汎網膜光凝固術は、2~3週間間隔で計4回に分け、平均全1200照射で施行した。汎網膜光凝固術前、術終了から1から2か月時でレーザードップラー眼底血流計(Canon CLBF model 100)を用いて、視神経乳頭から1~2乳頭径離れた部位の網膜上耳側動脈の血管径と血流速度を同時に測定し、網膜動脈血流量を算出した。 【結果】汎網膜光凝固術前後で網膜動脈血流速度に変化はみられなかったが、血管径は105.9±11.8μm(mean±SD)から、101.1±12.2μmと有意に狭細化しており(p<0.01)、網膜動脈血流量は、9.8±3.3μL/minから、8.4±3.0μL/minと有意に低下した(p<0.05)。動脈血流量の低下がみられなかった症例7眼中、5眼でその後、蛍光眼底造影検査にて光凝固術追加処置の判定がなされていた。 【考察】汎網膜光凝固術を施行することにより網膜動脈血流量が低下することが明らかとなった。虚血網膜の凝固壊死、網膜酸素飽和度上昇によると考えられる動脈径の狭細化が、網膜主幹動脈レベルにおいても認められた。
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