研究概要 |
【目的】糖尿病網膜症に対する汎網膜光凝固術後に発症する黄斑浮腫は、重篤な合併症であるが、発症のメカニズムは未解明である。今回、汎網膜光凝固術前後で中心窩脈絡毛細血管板血流量を測定し、脈絡膜血流量の変化とその後の黄斑部形態との関連を検討した。 【方法】増殖前、または増殖糖尿病網膜症患者30名46眼(平均年齢52.9才)を対象とした。汎網膜光凝固術前と術後1か月でレーザードップラー血流計(LDF4000)を用いて中心窩脈絡毛細血管板血流量を測定した。術前、術後1か,月、及び6か月で光干渉断層計(OCT)にて中心窩網膜厚を測定し、黄斑部形態を観察し、経過との関連性を検討した。網膜硝子体牽引症候群、網膜前膜などによる黄斑浮腫症例は除外した。 【結果】中心窩陥凹が保たれ黄斑浮腫の生じなかった群(46眼中25眼)では汎網膜光凝固術前後で中心窩脈絡毛細血管板血流量は、7.8±3.0(au)(mean±SD)から、11.0±5.4(au)と有意に増加していた(p<0.01)。一方、術後に黄斑浮腫の発症、あるいは増強が認められた群(21眼)では血流量に有意な変化はみられなかった。術前の両群間での血流量に有意差は無かった。 【考察】汎網膜光凝固術により中心窩脈絡毛細血管板血流量は増加するが、術後に黄斑浮腫が発症・増強する症例では血流量の増加がみられなかった。中心窩下脈絡膜循環動態の変化が、汎網膜光凝固術後の黄斑浮腫の発症・増強と関連している可能性が示唆された。
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