研究概要 |
視機能保護システム構築を目的に掲げ、介入前後で評価可能な前房水に着目し、まず治療の困難な黄斑浮腫に関わるサイトカイン・ケモカインの測定を行った。 網膜静脈分枝閉塞症に起因する黄斑浮腫に関しては、MCP-1とMIP-1βは黄斑浮腫の急性期慢性期のメカニズムに直接的には関与していないことが示された。しかし、網膜静脈分枝閉塞症に起因する黄斑浮腫でステロイドに反応する黄斑浮腫の病態は、MIP-1βと極めて関与が深いことが示された。 さらに今回、糖尿病黄斑浮腫の前房水を調べ、ベースラインにおいてIL-6、IL-8、MCP-1濃度はそれぞれ90.7±108.9pg/ml、165.0±121.2pg/ml、4.5±14.2ng/mlであり、IL-8、MCP-1はコントロール群より有意に高値であった(P<0.05、P<0.01)。さらに、MCP-1とIL-8間には強い相関を認めた(r=0.77,P<0.001)。その後にトリアムシノロンアセトニドを硝子体中に投与(IVTA)した症例に関しては、その前後における前房水のサイトカイン・ケモカイン濃度を比較検討した。IVTA一週間後、浮腫は有意に改善し、MCP-1も有意に低下した。IVTA後もMCP-1とIL-8間には相関を認めた(r=0.71,P=0.01)。その他のすべてのサイトカイン・ケモカインは、データ数の半数以上がマルチプレックス分析法で測定限界値未満であった。糖尿病黄斑浮腫を有する患者の前房水において、MCP-1、IL-8には相互に高い相関を認め、共通の病態により制御されていると考えられた。
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